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今日はリトルバスターズの10人で空港まで行くことになった。
それというのも、能美が自国に帰省するとのことで全員で見送りをすることになったのだった。
「ついに我らがリトルバスターズも世界進出か…」
「謙吾、意味分からないよ」
俺のギャグに対して真横に立っていた理樹が素早くツッコむ。
相変わらずいい筋をしている。いい相方に恵まれればM-1優勝も夢ではないのではないだろうか。
と、冗談はここまでにしておいて、数日とはいえ能美に会えないのは少し寂しい。しかもこの時期だ。きっとこれからみんなで初詣やら何やらで盛り上がっていくのだろう。その場に一人だけいないというのはどういう気分なのだろう。
…いや、その気持ちは俺が一番理解しているのかもしれないな。意地をはってリトルバスターズの輪から遠ざかろうとしていた自分が。
「では、みなさん!!しーゆーねくすといやーなのですっ!!」
「ああ、行ってこい。能美」
「クーちゃん、またねー!!」
今年、彼女の姿をみるのはこれが最後になるだろう。俺たちは満面の笑みで搭乗口へと向かう能美に声をかけ続けた。
その姿を見ながら俺はふと、「この輪も随分と大きくなったものだ」と考えていた。はじめてこの輪と出会った時は、三人でギリギリ小さい輪になっている状態だった。だが…小さくてもとても強いその輪の繋がりに俺は惹かれた。彼らと会ったその日から俺の物語は始まったんだ。
「さて、そろそろ帰ろう。しんみりしてても仕方ないだろ?」
そう言ったのは俺たちのリーダーである恭介。コイツは出会った時から少しも変わっていない気がする。それはもちろんいい意味でだ。
思えば…俺たちはずっとこいつに引っ張られてここまで来たんだ。この大きな輪を一番始めに作り上げたのは紛れもない恭介だ。
そう考えると、俺もたまにはコイツに感謝の気持ちを表していいのかもしれないな。
「恭介、この後いいか?」
「ん?なんだよ謙吾、何か用か?」
「ああ、少し付き合ってくれ」
思い立ったが吉日だ。柄でもない考えに至った俺は、そう言って恭介を手招きする。
ふぅ…昨日の来ヶ谷にでも影響されたかな…
「…直枝さんという人がいながら…浮気ですか?恭介さん」
「じゃないから」
などという西園と理樹のやり取りが聞こえてきたが、その内容を理解することはできなかった。
たまに西園はよくわからない言動をするな。
「あー、お前ら先に帰っててくれ。俺は謙吾と寄るところがある」
「あ、うん。じゃあお先に」
空気を読んでか、そう言って理樹達を先に帰した恭介は、俺の方に振り返る。
「で、どうしたんだ謙吾」
「まぁ、いいじゃないか、とりあえずついてこい」
「…?」
俺はあえて詳しいことを恭介に伝えずに言葉を濁す。それを聞いた恭介は首をかしげながらも、俺の後を素直についてきた。
いつもの恭介が俺たちを引っ張っている光景と真逆なこの構図がなんとも滑稽だ。
そうして俺は目的の場所へと恭介をエスコートしたのだった。
「で、ここはどこだ?」
「ん?どこからどう見てもラーメン屋だろう。頭でも打ったか?」
今回恭介を連れてきたのはラーメン屋だ。カウンタータイプの店内には、飯時は過ぎているにもかかわらず多くの客がいた。
「そうじゃなくて、なんで俺がラーメン屋に連れてこられているのかを聞いているんだが…」
俺の答えに何ともベタベタな反応をする恭介。甘いな、理樹ならもっと面白いツッコミを入れてたぞ?
まぁ彼の疑問も至極もっとも。あれだけ事前に思わせぶっておいて、ただのラーメン屋とくれば誰だって拍子抜けするだろう。
それならばリトルバスターズの全員を連れてくればよかったんだから。
「雑誌で評判になっててな。なんでも麺のコシが凄いらしい」
「…金ないぞ」
よっぽど金銭に困っているのか、恭介はそう言って、気まずそうに俺の方向へと視線を向ける。
その「金を貸してくれ」と暗に物語っている表情はなんとも情けなく、いつもの彼の威厳に満ちた姿はこれっぽっちも見当たらない。
「心配するな。俺の奢りだ」
「は?謙吾、もう一度」
「俺の奢りだ」
「……」
一瞬時間が止まったかのように、硬直する恭介。
「……はぁー!?はぁー!?はぁー!?」
3わけわからんポイント取得!!よっしゃーー!!
とか、わけわからん事は置いといて、何とも失礼な反応をするやつだ。
まあ確かにこれだけ長い時間を一緒にすごしてきて、俺が奢るなんて言ったことは今まで一度もなかったが。
「な、何が目的だ!?まさか食ったんだからジャンパー着ろとか言い出すんじゃ…」
「…一発殴っていいか?」
「痛いから嫌だ」
何故か偉そうに胸を張る恭介に俺は溜息を吐く。
というかコイツ最近、俺=ジャンパーという認識をもってないか?
「別に、ただの気まぐれだ」
「へぇ…」
俺がそう言うと恭介は、先程のおどけた表情から一転、いつもの全てを見透かしたような笑みを浮かべる。
全く、いつも思うのだがコイツはどこまで見通してるんだか…本当に末恐ろしい奴だ。
もっともそんな奴でもないと、リトルバスターズのリーダーは務まらなかったのかもしれないが。
「ま、そういうことなら遠慮なく御馳走になるとしよう」
「ああ、好きな物を頼んでくれ」
「よし、じゃあDXチャーシュー麺と、スーパー坦々麺。それとチャーハンLに、餃子5人前。それから…」
ガツン!!
とりあえず一発殴っておいた。
「なんだよ、好きな物頼めっていったクセに」
「限度があるわ!!」
痛そうに頭を押さえながら恭介は俺に向かって不平を洩らす。
まったくコイツは相変わらず無茶苦茶だな…いつもツッコミ役をしている理樹は大変だ。
ちなみに「お前もだ!」!というツッコミは一切受け付けない。
「だったら最初から『あんま高いもの頼むなオーラ』だしとけよ」
「どんなオーラだ…」
あまりの恭介の傍若無人ぶりに俺が呆れた様子をすると、恭介は『あんま高い物頼むなオーラ』についての説明をし始めた。
いや、そんなもの誰も聞きたくないのだが。
そう思った俺は強引に、恭介に対して先を促す。
「とにかく、節度を守って好きな物を頼んでくれ」
「それは好きな物って言わないんだよ。まぁいいや、俺はチャーシュー麺で」
「ああ、わかった」
恭介から注文を受け取ると、俺はカウンターから店員に注文を伝える。
程なくしてラーメンが二つ手元にやってきた。
「おっ、来たな、じゃあありがたくいただくぜ」
「そうだな。俺も食べるとしよう」
そう言って俺たちは運ばれていたラーメンに口をつける。
む…!!確かにこれは美味い。スープもさることながら、評判通りこの麺が秀逸と言っていい。コシのある麺がのりたまとよくマッチングしている。
「いや、お前のりたま携帯してんのかよ!?…というか持ち込んでいいのか?」
「なんだ、細かいことを気にする奴だな。そんなんじゃ大きい子供になれないぞぅ!!」
「見た目は大人!!頭脳は子供!!…ってなんだその逆『コ○ン!?』」
ある意味恭介の事を見事に言い表している言葉だと思ったんだがな…
店内だということも厭わずにいつものように馬鹿な掛け合いをしてしまう俺たち。
…ふと、騒いでいた恭介の声が消える。不思議に思って、俺がそっちの方向に振り向くと、先程の表情とは一転して、優しげな笑顔をした恭介が俺の顔を見つめていた。
「楽しそうじゃないか、謙吾」
「……」
俺は恭介の言葉に押し黙ってしまう。
素直になれずにクールを装って、リトルバスターズから遠ざかっていた俺。だが、恭介だけは始めから俺の本質を見抜いていた。ずっと彼らの中に入りたがっていた子供のような本当の俺に気づいていた。
思えば今俺がこうやってリトルバスターズの輪の中にいられるのは恭介のおかげなのだ。
そう考えると、まるで保護者に対するような言いようもない後ろめたさ、あるいは気恥ずかしさが俺の中に芽生えていた。
「くくっ、よかったじゃないか」
「ああ、そうだな…」
何となく目を合わせづらくなった俺は、恭介の問いかけにラーメンを食べながら呟くように答えた。
恭介はそんな俺の肩を叩きながら、堪え切れなくなったのか大爆笑している。
ああ…本当にこいつには敵わない。
「もうお前も自分を偽る必要はないわけだ。きっとこれからも、ずっとこの輪は続いて行く」
「当然だ。たとえ誰も続けなくても俺が続けてやるからな」
「ははっ、心配するな。俺も続けてやるよ」
今度は俺も一緒になって二人で笑いあった。
そうだな…。少なくとも俺たちはいつまでたってもリトルバスターズだ。
願わくば、他のメンバーもそう思っていてほしいものだ。いや、きっと思ってくれている。
みんながそう思っている限り、リトルバスターズはずっと続いて行く。この10人の友情の輪は永遠に不滅なんだ。
それが確認できただけで今日ここに来た甲斐はあったというものだ。
「しかし謙吾。お前は本当にリトルバスターズが好きだなぁ。球筋にでてるぜ?」
「ふっ、まぁな。このリトルバスターズへの愛だけは誰にも負けはしない」
ラーメンを食べ終わった俺は自信満々に恭介の方向に向き直る。
それを聞いた恭介は、てっきり笑いだすと思っていたのだが、不意に目つきを鋭くすると、俺に向かって反論してきた。
「ちょっと待て。リトルバスターズの事が誰よりも好きなのは俺だっての」
リーダーとしての威厳を保ちたいのか、それとも彼の意地が許さないのか、恭介は俺の事を睨み付ける。さっきの発言を撤回しろとでもいわんばかりだ。
もっとも俺もその程度で引きさがろうなどとは考えない。リトルバスターズを一番愛しているのは俺だ!!
「まぁ俺がリーダーだからな。当然俺の方がリトルバスターズを愛してるぜ」
「待て待て、俺はリトルバスターズへの愛のあまり、ジャンパーを作ったくらいだ。お前の愛なんて目じゃないな」
お互いに一歩も引かない論戦が続く。俺も恭介も相手に譲るなどということは一切考えていない。本気で相手を言い負かそうと子供のように躍起になっている。
…ひとしきり言うことがなくなると、嫌な沈黙が俺と恭介の間を支配した。
「……」
「……」
先程の和やかムードはどこへやら、俺と恭介は真剣な表情で睨み合う。静かだったラーメン店の中には異様な空気が流れていた。
先にその沈黙を破ったのは恭介だった。
「俺の方がリトルバスターズをずっと昔から愛してるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
もちろん俺もそれに対して素早く反応する。
「期間などは問題ではない!!俺の方が愛は深いわああああああああああああああ!!」
ガラララ…
「俺の方が好きだああああああああああああああああ!!」
「俺の方が愛してるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「っ!!?」
ん?この気配は…?
感じなれた気配を察知した俺と恭介は、バッと音をたててラーメン屋の入り口の方向へと振り返った。
そこに立っていたのは…
「す、すすすすすいません…恭介さんに渡すものがあったんですが…お、お邪魔だったようですね…!!」
「に、西園…?」
そこに立っていたのは何故か鼻血を流しているらしく、顔を必死に手で押さえている西園だった。
というか、なんで西園は鼻血を出しながらそんなに幸せそうな顔をしているんだ?
ふと横を見ると普段は冷静な恭介が、紅い顔をした西園とは対照的に、酷く青ざめている。
「…い、いや、違うんだ。今のはだな…?」
「し、しかし、棗×宮沢とは…いえ、宮沢×棗でしょうか?…予想外ですがこれはこれで多いにアリです…!!あんなに情熱的に愛を語り合うとは…」
必死な恭介の弁解に対して、よくわからない言語で語り出す西園。
恭介の顔からダラダラと大量の汗が滴り落ちる。
「ま、待て!!西園!!」
「はっ、失礼しました。お邪魔でしたね…ごゆっくり…!!」
「西園おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
恭介の伸ばされた手も空しく、西園は紅い顔を押さえながら全速力で駆けだしてしまった。
後に残されたのは全く状況が理解できない俺と、この世の終わりのような顔をしている恭介の二人。
すると恭介は俺の肩に手を置き、先程以上に真剣な、というより切羽詰まった表情で俺に語りかけてきた。
「謙吾…俺にはこれから超重要なミッションがある。すまないが後は任せたぞ」
「何、ミッション!?それなら俺も…」
「ダメだ。ピュアなお前の夢を壊したくはない」
恭介はそこまで言うと俺に背中を向け、全速力で走り出した。あっと言う間に背中が見えなくなる恭介。
全く、慌ただしい奴だ。
思えば今年もあと2日だ。…来年はどういった年になるんだろう。今のように騒がしい、だがとても楽しい一年になって欲しい。…いや、きっとそうなるんだろうな。
「誤解だぁぁぁぁぁぁぁ!!」という恭介の絶叫がこだまする中、俺はそんなことを思うのだった。
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10日連続更新2日目。side謙吾です・・・早くもきつくなってきましたヨ…
時系列的には12月30日ですね。
謙吾と恭介の絡みで、こういうほのぼのとしたのが本編にはなかったんでこんなノリにしてみました~
今回の企画は日常を描きたいということで、あまりカオスなことにはせずに、ほのぼの~としたムードで行きたいと思っているんですが、どうでしょう?
感想いただけるととても嬉しいです!!げんどうりょくになります~
web拍手では「リトルバスターズの一問一答」やってます!!ぜひぜひご参加(質問)ください~!!
もちろん普通の感想もとてもありがたいです!!
↓web拍手です!!只今一問一答開催中!!↓
http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=maio7749
今回の主役は謙吾っち。ってことは、次なる更新は真人か美魚になるのかな?(勝手に予想、根拠はナシw
本編中なかなか素直になれなかった、天邪鬼な謙吾。今では恭介の作った輪に感謝しつつ、はばかることなく大騒ぎを巻き起こす筆頭となった謙吾に幸あれ!(笑
どーでもいいですけど、っておい!?さんの謙吾は、謙吾=ジャンパー というより、謙吾=のりたま と化してる気がするんですけどwww
そしてやっぱり来るか、美魚っちww
「ピュアなお前の夢を壊したくない」って、この時点での謙吾の美魚っち観は「読書好きの普通の女の子」で止まってるんですねw
これが次第に「普通じゃないのか?」⇒「え? アブノーマルだと!?」⇒「ちょっと詳しく聞かせてもらおう」と変化していくわけですねっ(違う
それでは、いよいよ今日は大晦日!
っておい!?さん式バスターズの大晦日、楽しみに待ってます!
次回の主役は…今年最後を彩るのは…あの人です!!
謙吾は人間味があってとても好きなキャラです~。一見クールにふるまっておいて、実は…みたいな。
ジャンパー<のりたま…確かにそうかも知れん!!(ふっとボールアワー風)
なんででしょう?
ふふふ…自分ミオチンスキー(旧ユーゴスラビア代表)ですからね。そりゃあきますとも!!
この時の謙吾はまだ「読書中の普通の女の子」イメージを持っています。
将来的には「ある道の師匠」に…っておい!?
もう大晦日ですね~。REIさんの大晦日をたのしみにしつつ、がんばりたいと思います!!ぜひお付き合いください~
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