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「さて、次のスパイだが、誰かやりたい奴はいるか?」
そう恭介がみんなに向けて問いかける。
今日は労働の尊さを知るという名目でみんなでティッシュ配りのバイトを行っていた。 …いたんだけど、 いつも通り恭介の予定?思いつき?その辺は定かじゃないけど、とにかく急遽スパイ大作戦が行われることになっていたのだった。
自分で言ってて意味がわからないよ…。
「よしきたぁぁぁぁぁぁ!!」
「はーい!!はるちん行きまーす!!」
恭介の質問に謙吾と葉留佳さんがすぐさま立候補をする。 そのときを待っていたとばかりに席から立ち上がる二人に恭介は満足そうな視線を向ける。
「どっちかひとりだな。お前らで勝負して決めろ」
またそうやって恭介は何でも楽しもうとする…。まぁそこがいい所だとは思うんだけど。
「フッ、いいだろう」
「謙吾君、いくら竹刀がないからって手加減はシナイヨ!!ちなみに今のはしないと竹刀をかけて…」
「3点です」
「うわーん!!ひどいヨ!!みおちん」
「ヒドいのは今のギャグです。凍死するかと思いました」
…西園さん。相変わらず葉留佳さんには容赦ないなあ。
容赦のかけらもない西園さんの批評に僕は思わず苦笑する。
まあ確かに今のギャグは寒かったけどね。 しかも自分で説明をしだすとはツッコミ殺しもいいとこ……はっ!! また変なトリップをしてしまった。
「三枝、いくぞ」
「望むところだヨ!!」
しかし勝負って言っても一体どうやって決めるんだろう? じゃんけん?バトル?それともまさか大穴でジャンパーさんひる…
『ジャンパーさんひるがえーった!!』
「大穴来た!?」
まさかの大穴、ジャンパーさんひるがえったが二人の間で繰り広げられた、と思いきや…
「はっはっは!!俺の勝ちだな!!」
「うう…あそこでミスをしなければ」
「…しかも勝負付いた!?」
歓喜する謙吾と肩を落とす葉留佳さんだが、はっきり言って傍から見てる側としては勝敗の基準がさっぱりわからない。
まぁ、とにかく次のスパイは謙吾に決まったようだ。
「よし、お前はジェームズ・謙吾だ」
恭介が勝者の謙吾を称え、彼にコードネームをつける。
なんというか…王道だ。それを聞いた謙吾は、コードネームに満足したのか意気揚揚と立ち上がり、僕たちの方に向き直った。
「ふっ、剣道界の009と呼ばれた俺の実力を見せてやろう」
「いや、それサイボーグだから」
「何ぃ!?パチンコ界のスリーセブンだって!?」
『『『『『『『こいつ馬鹿だ!!』』』』』』』
相変わらずの真人の大ボケっぷりに再び鈴ボイスでツッコミが入る。 ちなみに今回はしっかりと僕も参加させてもらった…ヤバイ、何かすごく楽しい。
というか真人はどうやったらそんな風に聞き間違えるんだろう。ここまできたらそれはある意味特技と言える気もする。
しかし謙吾がスパイ…普段の姿からはあまり想像できないな。
「宮沢さんがスパイですか」
「ああ、シュパイでしゅ…ってうつってしまったじゃないか!?」
「掘り返さないでください…!!」
噛み噛みの言葉に恥ずかしがる謙吾と西園さん。いや結構天然が入ってる西園さんはともかく、謙吾まで何やってんのさ…。
はい!!そこのジャンパー!!乙女のように恥じらわない!!
「…不安だな。大丈夫なのか?謙吾少年」
「フッ、俺にかかれば気配を消すことなど容易い」
「わふー!!ニンジャなのですっ!!」
「俺のことは猿飛・謙吾と呼んでくれ」
「いや、ジェームズはどこに消えたのさ」
無駄に自信満々な謙吾にしっかりとツッコミを入れておく。
「なら、ジェームズ・K・猿飛でどうだ?」
「ミドルネームつければカッコイイってもんじゃないよ?」
ああもう、また話が脱線した。 だけど確かに謙吾なら気配を消すことなんて朝飯前かもしれない。 武道で鍛えた彼のスキルは長年付き合ってきても底が知れないほどだ。最強の名は伊達じゃない。
しかしそれを差し引いても今の謙吾だと勝手に騒いで自滅しそうな気がするのは僕だけなのだろうか。
「心配するな。理樹」
「謙吾」
そんな僕の心配に気づいたのだろうか。謙吾が僕の肩を叩く。 その姿は威厳にあふれていて、彼の自分に対する自信の程が伺えた。
「万が一見つかりそうになっても声色を使えばいい」
「ふぇぇ。本当に忍者みたいだよ~…」
「ほう。やって見せてもらおうか」
得意げに胸を張る謙吾に、恭介が挑戦的な視線を送る。 しかしさすがは謙吾。そんな視線をものともせず余裕の表情で「いいだろう」と頷いた。
ここまでの自信満々とは…謙吾は一体どんな声色を!?
必然的にみんなの視線が謙吾に集中する。
「マーン!!(人類的に)ミーン!!(ミンミンゼミ的に)ムーン!!(美少女戦士的に)メーン!!(剣道的に)モーン!!(妄想的に)」
「……」
あまりの声色に絶句する僕達。いや、むしろそれは声色と言えるのだろうか。
「フッ、どうだ?」
「……」
「あまりの凄さに言葉も出ないか?」
いや、どこからその自信が? 謙吾……ハッキリ言って自滅フラグ立ちまくってるよ。
このまま謙吾を戦場へと行かせたら、「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」って言っている人を戦争に行かせるのとなんら変わらない。どうにかして彼をとめないと…でもどうやって?
「うまうー」
僕が謙吾をどうやって止めようかと頭を抱えていると、ふと後方から…具体的には恭介が座っていた席から聞き慣れた声がした。
弾かれるように振り返ると、恭介の座っていた席に本日三回目の斉藤出現。
なんかちょっと疲れてない? …というかただ仮面をかぶっただけじゃん。
「ほわぁ!!いきなり斉藤さんが現れたよ~!!」
「こ、この俺でも気づかないとは。いつの間に現れた!?」
「ミステリですね…」
ズガン!!
これだけの条件がそろっても斉藤の正体に気づかないあほあほワールドに、思わず机で頭を打ってしまう。
「なあ理樹君」
「なに?」
「…ツッコミは大切だな」
「分かってもらえてうれしいよ」
珍しく僕に同意してくれた来ヶ谷さんと頷き合いながら、僕は今打った頭をさする。
「うまあああああうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「なっ!!のりたまだとぉ!?」
「隙あり!!うまうー!!」
「しまった!!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
とか何とかやっているうちに、バトル開始、そして謙吾撃沈。
相変わらず斉藤の戦闘能力は凄まじいが、謙吾ものりたまにつられるって…どんだけー。
「この世に斉藤ある限り、俺は死なない。うまうー」
「やべぇ、カッコよすぎるぜ。斉藤」
「やはは、兄貴と呼ばせてくださいっ!!」
「フッ。さらばだ…」
去っていくきょう…斉藤。
そして例の如くすぐに仮面を外して戻ってきた。 お願いだからこの過程で誰か気づいてほしい。
「おっと、謙吾は続行不可能だな」
「…無念」
自分でやっておいてなんて白々しいんだこの男。
本気で謙吾を心配してるような恭介の態度に僕は呆れてしまう。
「恭介さんどこ行ってたんですか~?」
「ああ、ハンバーガー買ってきた」
しかもいつの間にかちゃっかりハンバーガー買ってるし…。 相変わらず無駄に準備がいい。
MISSION FAILED!! ってスタートもしてないよ!!
「ふう、そろそろ次で最後にするか?」
「というかもうやめようよ」
「それは駄目だ。なぜなら次は…」
「次は?」
僕の質問に対して、恭介は意味不明のポージング(荒ぶる○○のポーズだろうか?)を取った後、振り上げた腕でそのまま僕の事を指さした。
「理樹。お前だからだ!!」
ふーん……ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ぼ、僕!?
とまぁいきなりの予想外な展開に、思わずお笑い芸人のようなリアクションを取ってしまう僕。
「はっ、ついに理樹を解き放つか」
「いやいやいや。そんなこと言っても特に何もないから」
何故か得意がる真人に素早くツッコミを加える。よし、我ながら今のはいいツッコミだった。
ってそんなこと考えてる場合じゃない!! もはや体質なのだろうか、自分のツッコミについ体が反応してしまった。
「まあとにかくだ、ジェームズ・リキの出番だな」
「元ネタ謙吾と同じじゃん…」
「いや、お前の元ネタはジェー○ズ・三木だ」
「マイナーすぎて誰もわからないよっ!!」
マイナーな上にスパイと全く関係ない。 恭介のことだ、どうせ語感だけで決めているんだろう。
でもこうなったら恭介は誰にも止められない。抵抗するだけ無駄だということは嫌と言うほど知っていた。
…はぁ。やるしかないな。
「わかったよ。やればいいんでしょ…」
「さすがだな理樹!!」
「わふー!!リキかっこいいのですっ!!」
「理樹君。頑張って~」
潔く覚悟を決めた僕に、みんなから応援の声が上がる。 スパイミッションか、難しいけど、どうせやるなら楽しまなきゃ損だよね。
ようし!!頑張ろう!! と小毬さんチックな掛け声を心の中であげてみる。
「じゃあ早速行ってくるよ」
「待て、理樹」
気合いをいれて出発しようとした僕を、恭介が肩をつかんで引き寄せる。
…なんだろう?まだ何かあるんだろうか。
「なに?恭介」
「変装を忘れてるぞ」
「うむ、その通りだな」
恭介の言葉に来ヶ谷さんもすぐさま相槌を打つ。
「へ、変装?」
「ああ、スパイと言えば変装だろ?」
た、確かに変装はジェームズの十八番だけど。…あ、○木じゃないほうね? なんだか随分本格的だなあ。始めは乗り気じゃなかったけど、だんだんワクワクしてきたよ。
「う、うん。わかったよ。どう変装すればいいの?」
僕ははやる胸をおさえて、恭介に質問する。
どんな変装だろうやっぱり赤の他人に成りすますのかなぁ、それとも警察になって職務質問とか(犯罪です)?
「女装」
しかし、恭介の返答は僕の予想を遙かに斜め上に超えたものだった。どれくらいぶっ飛んでるかというと北海道を目指してたのに月に着いちゃってたくらいだ。
あまりの事態に混乱した僕は事態を把握できない。 アホの子のように開いた口がふさがらない。
「は?」
「だから女装だよ」
「ちょっ、…なんで!?どうしてそんなことしなくちゃいけないのさ!!」
「……」
「答えてよ恭介!!」
ようやく事態を理解した僕は、慌てて恭介に詰め寄った。恭介は言葉に詰まっているのか何も答えないが、僕はしつこく追及を続ける。それに対して恭介はふぅと溜息をつき、下を向きながらボソリと呟いた。
「…そんな答えはな、この世界のどこにも存在しねぇよ」
「いやいやいや!!だったらやらなくていいじゃん!!」
もうわけがわからない!! 今までだってわけわからない事はたくさんあったけど、これはもう1万わけわからんポイントだ!!
なんで女装なんてしなくちゃいけないのかの理由がさっぱりわからない。
西園さん、お願いだから目を輝かせないでよ…。
「ううう!!真人!!何か言ってやってよ!!」
「理樹…お前とルームメイトになれてよかった」
「ちょっ、どこかにいかないでよ!!」
真人は妙にかなーりいい顔をして僕を見つめている。何そのどこかで見たようなシリアスフェイス。
「ええい。うるさいファッキン叩き潰すぞ、ガール」
「目が怖いよ!!…ってさりげなくガールにしないでよ!!」
とにかくこれだけは絶対に阻止しなければ!!
そんな事をしたら僕の沽券に関わってしまう。
…そうだ!!
とある考えにいたった僕は、少しほっとしながら口を開く。
「そもそも着替えがないじゃん。これじゃあ…」
『こんなこともあろうかと』
僕が言葉を言い切る前に、恭介と来ヶ谷さんが声を揃える。
ああ、そういえばこの2人がいたんだった。
「俺はミニスカを用意しておいた」
「おねーさんはリボンを用意してあるぞ」
もうね、この二人の準備のよさが憎い…。
しかもこの寒い中ミニスカって鬼ですか。
「私もこんなこともあろうかとデジカメを用意しておきました…」
「いや、西園さん!!それ明らかにいらないから!!」
物凄くいい表情でぐっと親指を立てる西園さんに即座にツッコミを入れる。
「青春のメモリーだネ!!」
「いやいや、いらないからそんなメモリー!!明らかに黒歴史じゃん!!」
ああああああああ…もう駄目だぁぁぁぁ。
大切な仲間たちによって、どんどん窮地に立たされていく僕。
「でも、胸はどうするんですか~?」
「わふー!!別にいらないのですっ!!」
「能美さん。気が合いますね」
今ここに貧乳同盟が生まれた…
がしっと友情の握手をする二人だが、僕にはそんなことを気にしている余裕はなかった。
「おお、能美と西園がなぜか必死に・・・だが本当にどうするんだ?」
『そんなこともあろうかと』
謙吾の質問に、また二人が図ったのかのように声を揃える。
…グルなんじゃないの!?この2人!!
「おねーさんはメロンを2つ用意しておいたぞ」
「め、メロ…!?」
「なんだ、来ヶ谷も持ってきてたのかよ。じゃあ俺のスイカはいらないな」
「ちょっ、どれだけ巨乳にする気さ!?というかスイカって明らかに季節はずれじゃん!!さらにどこに持ってたのさ!!それ!?ああもう…!!ツッコミどころ多すぎ!!」
とまることを知らない二人に、必死でツッコミを入れる僕。
「でた、理樹の48の必殺技の一つ。ハイスピードツッコミ」
「ああ、俺たちは今サーガの序章を垣間見たのさ」
「そこ!!ツッコミどころ増やさない!!」
スイカを切り分けながら野次馬のように語る恭介にツッコむ。
どこに包丁持ってたのさ!!というか店内で切り分けないでよ!? …とツッコミたかったがさすがにやめておいた。
「めめめめめめ、メロンなんて破廉恥なのですー!!」
「わー!!ひんぬーわんこが暴走したぁ!?」
何を思ってか、メロンをみて暴走したクドが、来ヶ谷さんの手から一瞬でメロンを奪い取る。
そのあまりの必死さに、来ヶ谷さんも対応できなかった。
「あ、こら、クドリャフカ君」
「こんなものは食べてしまうのですっ!!メロンイーター作戦ですっ!!」
「…私も自分に忠を尽くします」
「まあクドリャフカ君と美魚君が可愛いからいいとしよう」
どうやら来ヶ谷さんは自己完結したらしい。 落ち着いた様子で恭介の切り分けたスイカを食べている。
恭介は呆れたようにその様子を見ると、自分のポケットから何かを取り出した。
「しょうがねぇなあ。ほら理樹。普通のパッドだ」
「よかった。っていうかあるなら始めから渡してよ…?」
そこまで言ってはっと気づく。
……僕、いつの間にか女装を容認している!?
それを聞いた恭介はニヤリと笑い、
「よし、理樹も納得してくれたようだな」
「うぁぁぁぁぁぁ…!!」
こうなってしまってはもう言い逃れは出来ない。
…そもそも恭介の思い付きを回避できるわけがないのだ。
観念した僕はもの具ごくいい笑顔をしている恭介に肩を抱かれ、そのままトイレへと強制連行される。
「…きょ」
「ハイ西園さん。それ以上は禁止」
何かを語ろうとした西園さんにあらかじめ予防線をはっておく。 それを受けた西園さんは本当に残念そうな顔をした。
「残念です」
「ま、理樹の大変身を楽しみにしてな」
恭介はそういってトイレのドアを閉めると、あらかじめ用意していた衣装を僕へと渡してきた。
しかしこれは…
「ス、スカート短かすぎない?」
「んなことねぇよ。ほら、服脱げ」
「えっ!?自分でできるよ!!恭介は外で待っててよ」
「そう言って逃げるかも知れないからな。あーもう、まどろっこしいな」
「ちょっ恭介!!やめ…!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
恭介に強引に服を剥がれる僕。 そしてそのままスカートをはじめ女物の服装を、一瞬で彼の手により着せられてしまった。
うう。もうお嫁にいけない。 …って嫁にはいかないよ!!
「うう、ひどいよ恭介…」
「なんだよ。男同士なんだから気にすんなよ…よし、できた」
僕の頭にリボンを結び終わった恭介が僕を立ちあがらせる。どうやら女装は完了したらしい。 一応鏡で確認しつつ、(正直自分で似合いすぎて引いた)僕たちがトイレから出ると、すぐ外にはみんなの姿があった。どうやら僕の女装をまっていたようだ。
…どうでもいいけどトイレの前占領するのってどうなのさ。
「うう、汚されてしまった」
「!?恭介さん!!…そこのところを詳しく!!」
「あーみおちん。興奮し過ぎだヨ」
「はいっ!!漢塾ティッシュですっ!!」
「…失礼しました」
いや、だからそのティッシュ商品なんだから使っちゃ駄目だって。
漢塾ティッシュを鼻にあてる西園さんに僕は肩を落とす。
「で、どうだ?新しい理樹の姿は!?」
そんな中恭介がみんなに感想を求める。自分のメイクアップの結果を知りたいのだろうが、僕は何故か緊張してしまう。
「……」
…あれ?
水を打ったようにみんな黙りこくってしまっている。 こっちは恥ずかしいんだからどんな言葉でもいいから何か言ってほしい…。
「なんだ、反応なしかよ?こんなに可愛いのに」
恭介はそんなみんなの反応が不服のようだ。
「何か言えよ」と言わんばかりの視線をみんなに向けている。 それに対してみんなはどこかバツの悪そうな顔をしていた。
「いや、そういわれても」
「ああ。もはやどうリアクションしていいのか…」
「うん。言葉が見つからないよ」
そこまで言って、みんなは全員で口を揃えた。
『可愛すぎて』
へ?
うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なななな何言ってるのさ!?みんな!!
そんな顔を赤らめながら僕の事を見ないでよ!!
「つまりはこういうことだ。理樹君萌へーーーーーーーーーー!!」
来ヶ谷さんにいたっては血が足りていないのか…もう足元がフラフラだ。
「いやいやいや!!僕の女装なんて見ても誰も嬉しくないでしょ!?」
「なんだろ……すげぇ嬉しいぜ」
「真人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
どこにもいかないよね…真人は。頼むから危ない方向にいかないでよ。
あれ?この場合僕と真人のどっちが危ないんだろう?…明らかに僕の気がするのは気のせいだろうか。
「おい、理樹、髪型崩れてるぞ?ほら、すいてやる」
「え?あ、ありがとう恭介」
そう言って恭介が僕の髪を櫛ですいてくれる。
か、顔が近いよ…。
僕はそんな間近に迫った恭介に、思わず顔を赤らめてしまう。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うわー!!みおちんが他界したぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「しかも何故か物凄い幸せそうだぞ!?」
西園さん…合掌。君の事は忘れない。
…ってんなわけない。ってああもう!!みんなカオスすぎるよ!!
「うぇぇぇぇ!!みおちゃんしっかり~」
「大丈夫です。まだ…死ねません」
「うん。僕もこんな事で殺人罪を負うのは嫌だよ」
「ま、つまり理樹の可愛さは人も殺せるほどだと言うことだ」
「いや、うまくまとめないでよ。というか多分違うから」
僕のツッコミを華麗に無視した恭介はみんなの反応に満足気に頷き、僕に向っていつものように宣言した。
僕はというと、疲れきってしまってもう抵抗する事もできなかった。
「よし!!ミッションスタートだ!!」
MISSION START!!
「こちら理樹。配置についたよ」
『よし、理樹、鈴に接触しろ』
いきなり恭介から厳しい指令が入る。 その余りの唐突さに僕は思わず間抜けな声をあげてしまった。
「うぇ!?いきなり…?」
『ああ、そのための変装だからな』
「わかったよ。でもバレないかな?」
『変装は完璧だ。あとはお前次第だな』
「善処するよ」
僕だって女装してるなんて、彼女である鈴には絶対バレたくない。成り行きを知らない彼女に女装趣味でもあるのかと思われたら目も当てられない…。
不本意ではあるけど、なんとか頑張るしかなさそうだ。 バレなければいいんだ。バレなければ。うまく女の子を演じないと…。
『いけ。理樹』
「ようし!!がんばるよ~」
『…普通でいいから』
どうやら小毬さんのマネは不評のようだ。…何故か無線機の無効で「ぐはぁ!?」とか「きゃっ!?」とか悲鳴が聞こえたけど。
しかし僕がツッコまれる側とは、 いつもはツッコむ側だけど逆転もなかなか…いやいやいや。
「…よろしくお願いします」
覇気のない声でティッシュを配る鈴に近づく。大分緊張しているようで動きも鈍いし顔つきも険しい。
少しは他人になれたとはいえ、さすがにいきなり一人でのバイトは難しかったかもしれない。
『理樹。さりげなく鈴の前に立て』
「了解」
恭介の指示に頷くと、僕は鈴の目の前に立ちふさがった。 …きょろきょろと落ち着かない彼女とふと目が合った。
う、バレないかな。なんか凄い緊張する。
「よろしくお願いしまーす」
鈴がおどおどとティッシュを差し出してくる。 どうやらバレなかったようだ…ほっと一息つく僕だけど、なんか複雑だ。 メイクも軽めなんだから気づいても良さそうなものなのに、まぁ鈴にそういう所を期待しても無駄か。
『よし、理樹。さりげなくそれを受け取れ』
恭介の指示通り差し出されたティッシュを受け取る僕。
「あ、ありがとうございますっ」
それを見た鈴は、おっかなびっくりながら嬉しそうにお辞儀をした。
…う、うわぁ、かわいいなぁ。もう。
来ヶ谷さんならこの瞬間に抱きついてミッション失敗になりそうだ。かくいう僕も少し危なかったんだけど。
『理樹。そこでさりげなくプロポーズだ』
「そこのお嬢さん。僕に一生お味噌汁を作って…って何やらせるのさっ!?」
「…何言ってんだ?」
「あ、いや、なんでもないよ」
「???」
思わずプロポーズしそうになってしまった。 和んでいる所に、急に恭介の指示が来たもんだから…
ってこれじゃあさっきの電話と同じじゃないか。
『理樹…正直今のセンスはどうかと思うぞ』
「う、うるさいなぁ…」
「?さっきから何してるんだ?」
「え、えーっとね…」
ヤバい!!追及が来た!? ど、どうやって答えればいいんだ!?
急な事態に僕はテンパってしまって、頭が真っ白になってしまった。
恭介…何か指示を!!
『理樹、そこでさりげなくミスターの真似だ』
「うーん、どうでしょー。いわゆる一つスニーキングですね~』
「す、すにーきんぐ?」
『さらにキム○クの真似だ』
「ちょ!?待てよ!!」
「誰に言ってるんだ?」
『おお、モノマネをしながらツッコまれたぜ。とどめにさりげなく夜○月の真似だ』
「…だ、駄目だこいつ、早く何とかしないと」
「いや、だめなのはお前だろ」
『理樹。まだまだここからだぜ。さらにさりげなく…』
ぶつっ!!
僕は恭介との無線機のスイッチを切る。
…まったく。絶対楽しんでるだけでしょ。というかさりげなくとか無理だから。
「お前。だいじょーぶか?」
さっきから僕が挙動不審な行動をとっていたからだろう。赤の他人のフリをしてるにもかかわらず鈴に心配されてしまう。
なんか僕、すっごい情けないんだけど…。
「う、うん。大丈夫だよ。君はバイトの途中?」
「そーだ、ティッシュ配りだ」
余り質問されるとぼろが出る可能性があるので、僕はなんとかこっちに向いていた話の流れを鈴の方向に振る。そこは僕と鈴の話術の差。すぐさま話題の矛先は鈴の方向へと向いた
「大変じゃない?」
「…少し」
「一人で大丈夫なの?」
小さくなってる鈴に僕は少し意地悪な質問をした。無線機は切れたけど、僕のミッションはまだ終わっていない。鈴の成長具合を確認するのが僕の役目だった。
それに対して鈴は力強く、ハッキリと答える。
「一人じゃない」
「え?でも今は一人じゃ…」
ちょっと不用意な答え方だったかもしれないと、僕が焦るよりも早く、鈴は話を続けた。
「一人じゃない。みんなと一緒だ。たとえここにはいなくてもあたしたちはずっと10人だ」
「……」
「だからあたしは大丈夫だ」
…ねぇ、恭介。 鈴は本当に強くなったよ。 それは恭介が一番始めに求めた強さとは違うかもしれないけど、 ……これは多分立派な強さだ。
『感動したぜ!!』
僕が鈴の言葉に感動していると、切ったはずの無線機から何故か恭介の声が聞こえてきた。 いきなり耳元に大声が聞こえてきたため、僕はその場に飛び上がってしまう。
「うわぁ!!電源切ったのになんで!?」
「…さっきから何言ってんだ?お前」
『はっ、電源はいつでもこっちから入れれるようになってるんだよ』
「なんでそう、無駄に隙がないのさ!?」
「全くだ。たまにおねーさんも感心を通り越して怖くなるぞ」
「…ってうわぁ!?」
「くるがや!?」
いつの間にか来ヶ谷さんが僕の後ろに立っていた。相変わらずの神出鬼没っぷりだ。もしかしてと思い、周りを見回してみると、物陰からのぞいているリトルバスターズのメンバーたちも見える。
その中から恭介がこちらに向かって悠然と歩いてきた。 …これ以上はないというくらい満面の笑顔で。
「よく言ったな、鈴」
「きょーすけ?」
鈴はまだ何が何だか分かっていないようだ。 頭の上にいくつも?マークが並んでいる。 そんな鈴に対して、恭介は両手をひろげ、リトルバスターズのメンバーを指し示しながら話しかける。まるでどこぞのミュージカルでも見ている気分だ。
「ああ、きょーすけだ。ほら、リトルバスターズ全員集合だ」
「…ん?理樹がいないじゃないか?」
「いや。いるじゃないか、ここに」
げ、こんなタイミングでバラしちゃうの!?
とは言っても今更逃げられるわけもなく、仕方なく僕は覚悟を決める。 ちなみに鈴は僕の方ではなく、きょろきょろ周りを見回していた。
「んん?」
「いや、だからここに」
恭介がハッキリと僕の事を指差す。
「…や、やぁ鈴」
観念した僕は、鈴に向かって種明かしをする。 それを聞いた鈴は数秒間フリーズしていたが、何かに気づくとその目を丸くして…
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
驚きの声をあげた。
「これが理樹?くちゃくちゃ可愛いぞ」
「そんなまじまじと見ないでよ。恥ずかしい…」
「ぐはっ!!あの恥じらいがまた!!」
「あー、姉御が鼻血を!!それはみおちんの専売特許デスヨ…」
「…よろしかったら譲りますよ?」
鈴はまだ目の前にいるのが僕だということが信じられないようだ。 さまざまな角度から僕の事をじろじろと凝視している。
そんな半信半疑な鈴に、ニヤニヤと笑顔を浮かべながら恭介が口を開く。
「しかし鈴があんなことを…おにーちゃん感動して涙出てきたよ」
「わ、わすれろぉ!!」
それを聞くや否や、鈴は僕に向けていた視線を180度回転させて真っ赤な顔で恭介に詰め寄った。
「俺も感動してジャンパーがひるがえっているぞ!!」
「おねーさんも感動してもう…はぁはぁだ」
「うん、とりあえず感動の意味を辞書で調べた方がいいよ」
「ふかー!!」
どうやら鈴はさっきのセリフをみんなに聞かれていて、相当恥ずかしいらしい。
確かに恭介の言うとおりいいセリフだったけど、そう言うのって人に聞かれると恥ずかしいよね。
うわぁぁぁぁぁ…トラウマが蘇るぅぅぅ。
『僕はもう逃げない。何があってもみんなを助けてみせる』
「って一体何を録音してるのさぁ!?」
恭介の携帯から流れるいつぞやのドッキリ選手権での僕のクサい台詞に顔が真っ赤になっていくのを感じる。
ああああ、いつぞやのドッキリ選手権のトラウマが蘇る…
と頭を抱えて悶絶している僕に、恭介の更なる追い打ちが。
「あ、理樹。ちなみに今日はずっとその恰好な」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「ちなみに服は俺が持ってるからな。着替えようとなんてするなよ?」
ま、まじですか?この恰好で街中を歩けと…? まあもうなんだか慣れてきちゃったけどね。この恰好。
確かに始めは恥ずかしかったけど、それが徐々に快感に……なってないからね?
「さて、そろそろ午後の部でも始めるか?」
「そうだな、大分休んで筋肉さんも絶好調だぜ!!」
スパイ作戦の結果に満足したんだろう。恭介が清々しい顔でみんなに声をかける。
「でも鈴は休んでないし、昼食も食べてないよ?」
「あたしなら大丈夫だ」
「だめだよ~鈴ちゃん~」
強がる鈴だが、これで倒れでもしたら目も当てられない。 鈴の彼氏としてここはしっかりと主張すべきところだろう。
「そうだな。鈴はこれで昼食でもとってこい。理樹、付き合ってやりな…さらば野口!!」
どうやら恭介だってそんな事はわかっていたらしい。始めからわかってたかのようにそう言うと、僕に千円札を投げ渡した。 紙にもかかわらず綺麗な弧を描いたそれは僕の手にすっぽりとおさまった。
…もしかして気を使われたのだろうか。だったらせっかくの恭介の好意だ。ここはありがたく利用させてもらおう。
「わかったよ。鈴、行こう?」
「うん。わかった」
僕の後をついてくる鈴。 …これで女装してなければ完璧にデートなんだけどな。まぁこれでも十分か。せっかくの機会だしアブノーマルなデートを楽しむとしよう。
……実は僕の背中には恭介によって盗聴器が付けられていて、僕と鈴の女装デートを監視する、ミッションが行われていたのはまた別の話。
FIN
________________________________________________________
はい、今日も頭が手負いです。
ミッションオンサンデーぶっちゃけ更新忘れてました!!すいませんでした!!
だーいぶ前のSSなんで色々申し訳のない事に…。だって11月って設定なのにー!!
クリスマスターズのデート監視ネタもこれを受けてからの方がよかったんですが…
そしてショックなことが…今日アンソロ買ったらくどふぇす用のSSとタイトルがかぶってたー!!
ふふふ…ショックです。まぁ内容は全然違うんで、なにとぞお願いします…
感想いただけると嬉しいです!!
WEB拍手も嬉しいです!!
↓WEB拍手です。面白かったら押してください!!↓
http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=maio7749
もにゃさん(甘栗さんと)言う素晴らしい方が女装理樹の絵を描いてくれました!!
っておいページではSSでも絵でも募集中です!!よかったらお願いしますー
やべー斉藤やべー……
きょーすけと唯湖お姉様のコンビが華麗すぎてもう。
メロンは予測しましたけどスイカはwwww
それを流れるように処理するきょーすけ。
メロンを奪うクド公は微笑ましい…
手のひらの上で踊らされる理樹君。
不憫なのか苦労人か…この子は将来大物になるよ。 (ぉ
ておいさんは理樹君と鈴ちゃんのデレデレが好きだなぁ。
このなんだかよくわからない雰囲気が大好きですヨ。
最後にポケットからさり気にパットだしたきょーすけは変態…
>はるちんを犠牲にした謙吾の出番あっさりつぶされた!
>やべー斉藤やべー……
そりゃあ学園最強の男ですからね…しかものりたまによって謙吾のステータスがオール50ダウンしていたんです!!
>きょーすけと唯湖お姉様のコンビが華麗すぎてもう。
まぁこの二人の先読みっぷりはどうしようもないですからねw
>メロンは予測しましたけどスイカはwwww
>それを流れるように処理するきょーすけ。
きょーすけが普通なはずがないっ、ぶっとばないと!!と思ったらスイカが自然に出てきました。
>メロンを奪うクド公は微笑ましい…
地味にうらやましいですよね…メロン食いてぇ!!
>手のひらの上で踊らされる理樹君。
>不憫なのか苦労人か…この子は将来大物になるよ。 (ぉ
理樹君はいじられっこグランプリ2008年優勝候補ですからね!!でも黒理樹も何となく好きなのです
>ておいさんは理樹君と鈴ちゃんのデレデレが好きだなぁ。
>このなんだかよくわからない雰囲気が大好きですヨ。
この2人は俺の中でベストカップルです!!組み合わせ部門では最強です!!
>最後にポケットからさり気にパットだしたきょーすけは変態…
まぁ彼が変態なのはもはや…しかし原作ではそんなキャラじゃなかったんですがね…なぜ!?え?俺のせい!?
とにかく読んでいただき感謝感謝です!!
またどーかよろしくお願いします!!
就活で忙しいのでなかなか更新できませんが、のんびりまっていただけると嬉しいです!!
1月26日
ふと思ったが女装した理樹ならティッシュくらいすぐに全部配れるな(∵)
> ですね!!まぁティッシュは恭介と姉御がたくさん配り終えているんですが…しかし理樹君、大人気ですなぁ。
たくさんの拍手ありがとうございました!!
1月27日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
1月28日
>理樹子の人気は異常ですww
理樹子大人気!!まぁあんな可愛い子が女の子のわけがありません!!
>っておい!?さん所でもでてしまったか…女装ネタ…一問一答であれだけ盛り上がったから仕方ないですね(笑
安易に流行にに走ってスイマセンでしたー!!女装理樹の人気が凄いのがいけないんです!!(責任転嫁)
>哀れ理樹君…これからの君は女装してツッコミだ!!!さらにカオスっていきますね…
理樹=いじられキャラの方程式が確立しつつありますw。カオスは仕様です。
1月29日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
1月30日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
1月31日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月1日
>うまうー
はりゃほれうまうー!!
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月2日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月3日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月4日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月5日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月6日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月7日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
2月8日
たくさんの拍手ありがとうございました!!
次回作がいつになるのかわかりませんが、のんびりと待っていてもらえたら嬉しいです!!
おおww、全SS読んでくださったんデスかっ!!と言うことは俺の文書き処女作とかも…恥ずかしー!!prz
未熟なものでリトバスの雰囲気もまだまだ出せていませんが、これからも精進していくのでよろしくお願いしますっ!!
ただ就活中なんで、しばらくSSは書けないかも…。どうかのんびりまっていてくださいw
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