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「みおちゃん、どーなつどうぞ~」
「ありがとうございます。神北さん」

神北さんから頂いたドーナツを口に運びながら、私は持参したお茶をすすります。同じく神北さんも私の淹れたお茶を飲みながら、大好きなお菓子を次々頬張っていました。
騒がしい日々も楽しいですが、たまにはこうしてゆっくりとした時間を過ごすのも悪くはないと思います。読書をしながらのお茶会。なんてすばらしい響きでしょう。おしむらくは、ここにある本が全てマンガだということでしょうか。


「いや、ここフツーに俺の部屋だからな」

そんなまったりムードの邪魔をするように、後ろからこの部屋の主である恭介さんの声が聞こえてきます。
全く、細かいことを気にする人です。

「細かくないっての」
「……?」
「何「エスパーですか?」みたいな顔してんだよ?全部顔筋に出てるぜ」

はぁ、と呆れたように溜息を吐く恭介さん。…といいますか、顔筋にでてるとはどういう状態なのでしょう?相変わらず無茶苦茶な事を言う人です。

「で、今日はどういう風の吹きまわしだ?」

私と神北さんに向けて恭介さんが尋ねます。それはつまり私達が、どうして彼の部屋に来たかということでしょう。確かにこの3人で恭介さんの部屋に集まるというのは、初めてのことかもしれません。恭介さんの部屋に来る時は、いつももっと大人数でしたから。…というよりは何もしなくても、彼の方から突っ込んでくることの方が多かったんですが。

「えっとねー。ゆいちゃんとはるちゃんは二人で買い物行くって言ってました~」
「ああ、謙吾と能美は帰省中だな。謙吾はもうそろそろ帰ってくるだろうが」
「井ノ原さんは駅前まで走りにいっています」
「理樹君と鈴ちゃんはデートだよ~!!」
「そうか」

恭介さんはそれ以上追及することはせずに、手に持っていたお茶に口をつけました。…ひょっとしたら直枝さんと鈴さんのデートということで、私たちに負い目を感じているのかもしれません。こっちとしては今更気にしてはいないんですけどね。
それを口にすれば逆に気を遣わせてしまうとわかっていたので、私も神北さんもその事については特に何も言いませんでした。

「ええ、つまり恭介さん以外暇な人がいなかったので、ここに来たというわけです」

その代り私は、少し重くなってしまった空気を一掃するように軽めの口調で皮肉を言ってみます。…こういうのは私のキャラではないんですけど。

「ほぉ…」

恭介さんはそう言うと、何故か私の方を向いて薄く笑いました。
…一体何でしょう?

「一人で読書するっていう選択肢はなかったのか?」
「あ…」

…そうでした。以前の私なら、こんな時は自室かあの木の下で本を読んで過ごしていたはずです。…いえ、むしろ一人じゃない日なんてほとんどなかった。どうやらこの人たちと長い時間を過ごすうちに、自分は随分と変わってしまったみたいです。
全てを見透かすような…だけど優しい笑みを浮かべる恭介さんに対して私は気恥ずかしくなって目をそらしてしまいます。


「まぁ、ルームメイトも帰省中だし、せっかくだからゆっくりしていけよ」

そんな私の気分を察してか、そう言って恭介さんは手に持ったマンガへと視線を落とします。
あれ?…あの本は…?

「あれ~?恭介さん。その本って…?」
「ああ、海の帰りに買った全15巻セットだ」
「まだ読み終わっていなかったんですか?」

それは少し意外です。恭介さんの事だから、昨日一日かけて読破していると思いました。もっとも一日で15巻も読むほうがおかしいのかもしれませんが。

「いや、当然読み終わったぜ?」
「ふぇ?じゃあどうして?」
「読み直してるんだよ。2週目って細かい伏線とか見えて、違う面白さがあるんだぜ?」

ああ、その気持ちはわかる気がします。自分も推理小説を読むときなどは、2週目を読んで伏線回収したりしますしね。
マンガに視線を向けながら熱弁する恭介さんに、なんとなく納得してしまう私。

「はい、恭介さん。ワッフルです~」
「お、サンキュー」

お茶会in恭介さんずルーム(神北さん命名)はのんびりと進行していきます。
しかしこの光景はまるで仲のいい兄妹のようで和みますね。思えば両人とも鈴さんととても仲がいいですし、実はこの二人もとてもいいコンビではないでしょうか。
そんな事を考えながら、私は自分も何か読む物はないかと部屋を見回します。しかし、既に大掃除が終わっているからか、以前のようにマンガが平積みになっているようなことはなく、代りに、床に放り出されている分厚い本が、私の視界に入りました。

「恭介さん、これは?」
「ああ、アルバムだよ。部屋の掃除をした時にでてきたんで、ちょっと見返してみたんだ」
「恭介さん、見てもいいですかっ!?」
「別にかまわないぜ。減るもんじゃないしな」

神北さんの質問に恭介さんが是認したのを見届けてから、私は手元にあったアルバムを広げてみました。
ほう…これはこれは。そこにあったのは、ショ…げふんげふん、子供のころの恭介さん、鈴さん、直枝さん、井ノ原さん、宮沢さんの昔のリトルバスターズの姿。彼らは今と変わらず、みんなで馬鹿な事をやって、満面の笑顔を浮かべています。
みなさん外見はともかく、やっていることは今とさほど変わってませんね。
…しかし幼い頃の井ノ原さん、これはこれで多いにアリだと思います。

「ほわぁぁぁ、かわいいねぇ~」
「そうですね。これは新しいもうそ…いえ、何でもありません」

…今一瞬恭介さんの方向から物凄いプレッシャーを感じました。
か弱い私としては、彼に襲われてしまったらひとたまりもないので口を噤むことにします。
とまぁ冗談はここまでにしておいて…

「…少し、羨ましいですね」
「みおちゃん?」
「あ、いえ…なんでもありません」

心の中で思っただけのつもりが、いつの間にか声にでてしまったようです。不思議そうな神北さんに私は手を振ってなんでもないことをアピールします。
…ですが、羨ましいと感じてしまったのは事実です。私にはずっと昔から一緒にいてくれる友達はいませんでしたし、こんな風に友達と一緒に笑っている写真なんて一枚もありません。…写真の中の彼らはとても輝いていて、私にとってはとても眩しすぎました。
きっと彼らと会わなければこんな感情はもたなかったんでしょうね。きっと今でも自分が寂しいということにも気付かずに無為に日常を過ごしていたんでしょう。ですが…私は知ってしまいましたから。光に出会ってしまいましたから。今は闇が……昔の自分に戻るのがとても怖いんです。この写真は否が応でもそんな寂しかった昔の自分を思い出させます。
私にもこんな写真があればよかったのに…。

「はい、チーズ」
「っ!?」

下を向いていた私に、突然まばゆい光が降り注ぎました。私が驚いてその方向を見ると、そこにはカメラを構えた恭介さんの姿。どうやら私と神北さんの写真を撮っていたようです。

「ねぇ、みおちゃん」
「え?」
「写真はね、これからたくさん残していけばいいんだよ~」
「!?」

私は絶句してしまいます。
唖然としている私の頭の上に、恭介さんの手がスッと置かれました。

「まぁ、そう言うことだ」
「どうして…?」
「顔筋にでまくってるぜ?」

私の言葉を遮って恭介さんと、神北さんは笑顔を見せました。
なるほど、上手くごまかしたつもりでしたが、バレバレでしたか。……本当にお二人はいいコンビですね。
先程までの鬱屈した気分はどこへやら、私はそんな暖かい光景に思わずくすくすと笑ってしまいます。

「ようし、次は私が取るよ~。恭介さんこっち来て~」
「いえ、次は三人で取りませんか?」
「おっ、それはいいな」

私の提案に頷くと、恭介さんはカメラを机の上に置き、タイマーを押しました。そしてそのまま私たちの間に入ります。

「よし、お前ら動くなよ?」
「おっけーだよ~」

ああ…ここは本当に暖かいですね。
そんな輪の中に自分がいると思うと、私は頬が緩むのをどうしても止めることができませんでした。

「はい、ずわいが?」
「にー!!」

掛け声と同時に、私たちを眩いばかりの光が包みこみました。
…正直『ずわいがに』はどうかと思いますけど。
私はカメラに視線を向けながらも「今年も、こんな暖かくて、楽しい日常があたりまえであって欲しい」と切に……切に願いました。

 

 


「ん…」

私は、自分の意識が覚醒していくのを感じ、目を開けました。
…どうやら本(といってもマンガですが)を読んでいる間に眠ってしまったようですね。私の隣には、同じくいつの間にか寝てしまったのでしょう、神北さんの安らかな寝顔がありました。私たちはおそらく恭介さんのかけてくれた一枚の毛布に、二人でくるまる形になっています。
しかし、やけに静かですね。恭介さんも寝てしまったんでしょうか?
そう思った私が部屋の中を見回してみると、マンガに読みふけっている恭介さんを見つけました。

「……」

どうやら恭介さんはマンガに集中しているようで、私の目が覚めていることには気づいていないようです。
そう言えば、いつか直枝さんが言っていましたね、「読書中の恭介は神聖なんだ」と。
それを聞いた時は、言葉の意味がわからずに、直枝さんはそこまで恭介さんの事を…なんて妄想していましたが、実際にその姿を目の当たりにしている今ならなんとなくわかる気もします。
いつもこう黙っていれば二枚目キャラなんですけどね。…と、苦笑しようとした瞬間、私は彼の異変に気付きました。
恭介さん…泣いて?

「き、恭介さんっ?」
「…あ、ああ、西園か…おはよう」

私に気づいた恭介さんは急いで自分の目元をぬぐいますが、その眼から涙が溢れていたのを私は見逃しませんでした。

「おはようじゃありませんっ。どうしたんですか?」
「いや、別に大したことじゃ…」

苦笑してお茶を濁そうとした恭介さんに、私はジトっとした視線を向けて抗議します。他人の事には好きなだけ首を突っ込んでおいて、自分の時だけごまかそうとするとは卑怯だと思います。
その視線に観念したのか、恭介さんはやれやれと首を振ると重い口を開きました。

「親友が、死んだんだ」
「え、死んだ…?」
「ああ、主人公の親友が事故にあってな。そのまま死んじまった」
「は…?」

恭介さんはそう言いながら、自分の持っているマンガを指さしています。
…つまりは、マンガの登場人物、主人公の親友が死んでしまってそのことが悲しくて恭介さんは泣いていたということでしょうか?
……ま、まったく、とんだ人騒がせですっ。一瞬本気で心配してしまった私が馬鹿みたいじゃないですか…。
私は深い溜息を吐くとその場にへたり込みます。

「な、何だよその反応!!だから言ったじゃねぇかっ。大したことじゃないって!!」
「はぁ、そうですね。…と言いますか、その本二週目なのでは…?」
「いいものは何度読んでもいいんだよっ」

子供のようにムキになって言い切ると、恭介さんは開いていたマンガの本を閉じました。やはりこの人に二枚目キャラは不可能ですね…。

「直枝さんも苦労してますね」
「なんでそこで理樹が…いや、やっぱり聞かなかった事にしておく」

私の反撃を華麗に受け流すと、腕時計に視線を向けて立ち上がる恭介さん。その表情はすでに落ち着きを取り戻しています。

「さて、もう10時だぜ。そろそろ部屋に戻った方がいいんじゃないか?」
「そうですね。そろそろお暇させていただきます」

外を見てみるともう空は真っ暗になっています。随分と長居してしまいましたね。食事を取り損ねてしまいましたが、まぁ一食くらいはいいでしょう。
しかし、そうなると問題は神北さんですね。

「すぴ~」

…ここまで幸せそうに寝られては、起こそうにも起こせません。
するとそんな私の様子を見かねてか、恭介さんは先日鈴さんにしたように小毬さんを背中に乗せると、そのまま立ち上がりました。

「ほら、いくぞ」
「あ、はい」

そうして私たちは恭介さんの部屋を後にしました。

 

 

「くか~」
「しかしよく寝てやがるな…あっ、コイツ涎たらしやがった!!」
「くすっ」

涎を肩にたらされて毒づく恭介さんを見ながら、私はつい笑ってしまいます。

「お前、何笑ってんだよ…ああ、俺の服が…」
「こうしてると本当の家族みたいですね、と思いまして」
「…こんなでかい子供がいるくらい老けてるように見えるか?」
「い、いえ、決してそういうわけでは…」

そう言いながらも、恭介さんの瞳はとても優しい。本当の家族に向けるような暖かな視線を私や神北さんに向けている。
…ひょっとしたらこの人にとっては、私も神北さんも鈴さんと同じで、妹みたいなものなのかもしれませんね。
そんな事を考えながら、恭介さんと一緒に歩いていると、あっという間に女子寮の前に到着しました。


「さて、問題は絶対防衛ラインなわけだが」
「なんとかなるでしょう。ラインの構成員はほとんどが帰省していますから」

女子寮を不埒な男子から守るための絶対防衛ライン。普段は絶対的な力を誇るそれも、メンバーが不在ではどうしようもありません。
その話を聞いた恭介さんは、さっきまでの優しげな顔から一転して真剣な…ですがどこか楽しそうな顔つき変わります。
その表情はまるで悪戯を考え付いた少年のようです。

「ま、とにかく当たって砕けろだな。砕けるのは小毬だが」
「…何をするつもりですか?」
「これはミッションだ!!『小毬を部屋まで送り届けろ!!』」

そう言って恭介さんは私の方に向き直ります。
どうして神北さんが砕けるのかはわかりませんが、この人がこう言いだしたら止まらないことだけは、もうわかってしまいます。そしてその事を自分が楽しみにしてしまっていることも。

私が頷くのを確認すると、恭介さんはいつものように「あの言葉」を大声で宣言します。

今まで何度も聞いてきた、そして今年も何度も聞くことができるであろう「あの言葉」を…



________________________________________
ってことで今回は美魚でした~。

シリアス色が少し強かったですかね?そうでもないかな?

ただ騒がしいだけじゃなくて、穏やかだけど優しい雰囲気を出したかったんですが、どうでしょう?

感想いただけると嬉しいです!

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