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朝の心地よい空気が俺の意識を覚醒させる。
全身の筋肉の目覚めとともに、俺はベッドから上体を起こす。寝ぼけた眼をこすりながら俺は周囲を確認する。
その視界の端っこには俺の親友である理樹の宿題をしている姿があった。

「おう、理樹。おはようさん」
「うん、もう13時だけどね」
「夜の13時?まだまだ全然寝てねーじゃねぇか」
「いや、夜の13時は存在しないから。午後1時ってことだよ」

呆れたような理樹の声に俺は慌てて携帯の液晶画面を確認する。
今日もいい筋肉だぜ…。って待ち受けのルー・フェリーノ(ボディービルダー)に見とれてる場合じゃねぇ!!時間だ、時間!!

「何だよ…、まだ12時57分じゃねぇか…驚かしやがって」
「普通にほとんど13時と変わらないからね」
「え…そうなの?」

細かいことはおいといて、とにかく俺が朝寝坊したのは確かなようだ。
くそっ…いつもの朝のウォーミングアップ(腕立て、腹筋、背筋を200回ずつ)ができなかったじゃねぇかよ!!

「それにしても随分よく寝てたね」
「だってよぉ、恭介のせいで31日から昨日の夜まで一睡もしてないんだぜ?」
「まぁそうだけどね…」

そう、あの初詣の後、恭介の提案で初日の出を見にいったまではよかった。相変わらずどこで見つけてきたのか、穴場ともいえる場所で綺麗に初日の出を拝むこともできた。
問題はその後だ。あの野郎、「せっかく海に来てるんだから楽しもうぜ!!」とか言って、また新しいミッションを始めやがって…まぁ楽しかったけどよ。おかげで帰り道ではもうみんな疲れて熟睡だった。
ちなみに俺はと言うと、恭介が「寝てたら起こしてくれ」とかいうわけ分かんないことを言ったもんだから、アイツの運転中ずっと後ろでおぎおぎしながら過ごすはめになっちまった。まぁアイツも特に寝ることもなかったから、世間話に付き合う程度だったが…。

「あの野郎…遠慮ってもんをしらねぇ」
「それだけ真人を信用してるんだよ。…僕としては少し羨ましいかな」
「理樹…」

なるほどな、確かにそういう見方もあるか。
だが…

「ポジションチェンジしてやろうか?」
「ノーサンキュー」
「てめぇぇぇぇ!!羨ましいって言ったじゃねぇか!!」
「それとこれとは話が別だよ」

そう言って理樹は俺から視線を逸らす。
どいつもこいつも都合のいい野郎だぜ。

「ふぁ~、…しかし暇だな」
「そうだね」

昨日のはっちゃけぶりはどこへやら、暇を持て余す俺達。
誰かと遊んでもいいが、どうせ今頃他の連中も疲れてダウンしてるだろう(恭介以外)。疲れてるやつを強引に連れ出すのもなぁ。
そうなると理樹と二人で遊ぶしかないだろう。俺としてはそれでも全然OKだが。

「理樹、何か面白いことねぇか?ちなみに筋トレ以外でだ」
「そうだね。2008年腹筋とかはどう?」

理樹の口から聞きなれない筋肉ワードが飛び出す。
もちろん俺はすぐさまそれに飛びついた。

「おっ、なんだよそれ?」
「西暦1年から始めて2008年まで、その年にあったことをイメージしながら2008回腹筋するんだ」
「なるほどな!!でも俺はそんなに歴史に詳しくないぜ?」
「大丈夫、イメージだから別に間違っててもいいんだよ」

さすがは理樹。なんとも面白そうな事を思いつく。しかも体も鍛えられて一石二鳥と言うわけだ。

「よしっ!!早速始めるぜ!!」
「うん、頑張って真人。僕も2008回応援してるよ」

理樹にガッツポーズを見せて、俺は2008年腹筋に取り掛かる。
えーっと西暦1年…キンニク朝誕生。西暦2年…初代皇帝のマサトヌスが腹筋を発見。西暦3年…火星で戦争。西暦4年…年号を筋歴に改める。筋歴5年…

 

「なぁ、理樹」
「…なに?」
「これ普通に筋トレじゃねぇ?」
「そんなことないよ。…あ、マンガ読んでるから静かに筋トレしてね?」
「今筋トレって言わなかったか?」
「気のせいだよ、きっと」

なんか引っかかりを覚えるんだが…まぁいいか。とにかく今は2008年腹筋だ。
筋歴1600年…関ヶ原の戦い。筋歴1601年…黒船でビリー来日。筋歴1602年…ビリー宇宙に帰る。筋歴1603年…ビリーよ永遠に。
こうして俺の2008年腹筋は続いて行った。

…2004年…筋肉革命。2005年…国連筋肉決議。2006年…地球滅亡。2007年…新生リトルバスターズ誕生。2008年…

「理樹。よく考えたら2008年ってまだ始まったばかりじゃねぇか」
「あ、そう言えばそうだね…こうなってほしいっていう願望みたいなのをいれてみるとか」
「なるほどな、とにかく2008っと。…終わったぜ」
「じゃあ次は2008年背筋でもする?」

理樹の質問に俺は首を横に振る。よく分かんねぇけど、なんか違うんだよなぁ、これ。
と、俺が釈然としないものを感じていると、理樹も今まで読んでいたマンガを閉じて、俺の方に向き直った。

「どうだった?2008年腹筋」
「ああ、筋歴2006年に地球が滅んだときにはヒヤっとしたぜ」
「とりあえずツッコミどころは満載だったみたいだね」

そういって理樹はニヤリと笑う。…なんかコイツ最近恭介に少し似てきてないか?

「でもどうしようか?トランプでもする?」
「しょうがねぇな。じゃあダウトしようぜ、ダウト」
「終わらないから」

新年早々ゴロゴロするってのはあまり良くない気がするんだが…他に手がないのも事実だ。
こんな時に謙吾でも来ればバトルに興じられるのによ…あの野郎も今日は実家に戻ってるらしい。
恭介は…ダメだろうな。あいつ昨日帰りにマンガをごっそり買ってやがった。

「もう少しメンバーが増えないとトランプも盛り上がらないよね」
「あー…誰でもいいから来ねぇかな?」

俺が溜息まじりにそう呟いた瞬間、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
お、願いが通じたか!?

「はるちんをお呼びデスネ!!」
「あ、葉留佳さん」
「なんだよ。おめーか」

そこから現れた三枝に一瞬視線を向けた後、俺たちはすぐにトランプに向きなおる。

「ヒドっ!!もっと「待ってましたー!!」とか「はるちん革命だ!!」とか言って下さいヨ!!」
「待ってましたー」
「はるちん革命だ」
「うう…なんかおざなり。もう少し、こう、こんな感じで…」

そう言いながら大げさにジェスチャーをしている三枝。
ちなみに何一つ意味がわからねぇ。
まぁ普段は騒ぎまくってトラブルを起こしまくるコイツも、こういう時には非常にありがたい気もする。
からかうのもここまでにして、トランプにでも誘ってやるか。

「はるちんダーイブ!!」
「うおおおおお!?俺の手札がぁぁぁぁ!!」
「ああ…なんか大変なことに…」

前言撤回!!やっぱコイツ、どうしようもねぇ!!
俺は三枝の首根っこを掴むと、部屋の外に向けて歩き出した。無論ほっぽり出すためだ。

「ちょっ、真人君、タンマ!!理樹君も黙ってないで止めてヨ!!」
「葉留佳さん…フォーエバー」
「待ってぇぇ!!せめてこれを渡すまではー!!」

そう言ってポケットから何かを取り出した三枝を見た俺は、三枝を掴んでいた手をパッと離した。
その拍子に、床に落ちた三枝が「うぅ…ヒドイ」とか言っているが自業自得だ。

「葉留佳さん。それは?」
「フッフッフ…よくぞ聞いてくれました。なんとこれはあの有名な…年賀状なのだー!!」
「なんだってぇぇぇぇぇ!?」
「いや、オーバーリアクションすぎ」

はっ…三枝の奴が妙にためるから無駄に驚いちまったぜ。
って年賀状ねぇ。そう言えばほとんど書いたこととかもなかったな。そんなもんなくても今まではずっと一緒にいたわけだし、特に必要性も感じなかったからな。
今年だって俺は一枚しか書いていない。おそらく理樹もそうだろう。
しかもその一枚ってのもなぁ…純粋に俺が送ったってわけじゃないしな。

「ハイ!!理樹君、真人君」
「あ、うん…ありがとう」
「お、おう、サンキュー」

でもこうやって実際に手渡されてみると、悪い気はしないな。年賀状って言うのはただの儀礼的なものだと思ってたが、こうやって簡単に相手に気持ちを送れるならそういうのも悪くないかもしれない。
そうしみじみと思いながら裏面を見てみると…

「って、なんじゃこりゃあ!?」

そこに描かれていたのはやたら筋肉質なネズミ。その下には『真人ネズミ』と書かれている。
ちなみに理樹のネズミはハリセンを持っていた。「とりあえずツッコミ」という理樹のイメージで描かれたものらしい。…哀れ理樹。

「…でも、年賀状かぁ」

理樹ネズミに落ち込んでいた理樹が、すぐに気を取り直してそう呟く。強くなったな…理樹。

「ねぇ真人」
「はっ、皆まで言うんじゃねぇよ」

この後に続く言葉を理解していた俺は、理樹の言葉を遮って口を開いた。
もちろん俺も理樹と同じ意見だ。どうせ暇だしな。今更感はおいといて、たまには面倒くさがらずに年賀状くらい書いてみるか。

「じゃあ、まずはハガキを買いに行かないとね」
「おう、そうだな」
「やははー、はるちんも付き合いますヨ!!」
「お前、どうせ暇なだけだろ」

俺がそういうと、その場にどっと笑いがおこった。
どうやら三枝は全員に配る気らしいし、一緒に配れば効率もいいだろう。
よっしゃ!!今年も、早速楽しいことが始まりそうだぜ!!

「よし、行こうか」
「おう!!」

理樹の言葉に、俺と三枝が頷く。

俺は、その場から立ち上がりながら、さっきの事を思い出す。

そう、あの2008年腹筋、その2008回目に思ったことは……

今年も、楽しいことがたくさん待っている年に。


_______________________________________________
1月2日更新完了!!残りはあと半分だー!!

ぐふっ…でもきついな~…どうして俺はこんな無茶をしようとしたんだろう…だが!!若い時は無茶してなんぼですよね!!

ということで今回は真人です。

初日の出SSと言いたいところだったんですが・・・今回の企画は一日一人で10日で10人企画なんで…

え?初日の出も書け?…もし要望が多ければ、とりあえずこの10日連続が終わった後にでも書きたいと思います~。


あ、それから誤字指摘していただいた方ありがとうございました!!正直推敲する時間がないので、たまに誤字があるかもしれません…大変申し訳ないです。


感想いただけると嬉しいです!

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もちろん普通の感想もとてもありがたいです!!

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