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俺達は同じ日常を繰り返す・・・

これが何度目かすらもうわからない

たったひとつ

理樹と鈴を助ける。

その目標のために。 



そうして何度も繰り返す日常の中で、思い出す歌がある。

タイトルは・・・忘れた。

俺は馬鹿だからな。




---------------暗闇を照らす馬鹿----------------------




落下するバス。
鳴り響く悲鳴。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

考える前に体が動いていた。
俺は大切なモノを胸に抱きしめる。
絶対・・・離さねえ・・・!!


次の瞬間・・・大きな衝撃と共に、俺の意識は吹っ飛んだ。


俺は多分死ぬんだろうな。
でもよかったぜ・・・
最後に大切なものをひとつでも守れて。
こいつらのためにひとつでもできることがあって。

俺はそう思っていた。


「あいつらは弱すぎる。このままでは生きてはいけない」

だからあいつの・・・恭介のその言葉を聞いた時には頭が真っ白になった。
命を助けたことで満足して・・・俺は本当に馬鹿だ・・・

「なら、どうするんだよ!!俺や、謙吾が命を賭けたのが無駄だったってのか!?」

俺は完全に熱くなりすぎていた。
リトルバスターズの奴等を失うだけでも気が狂いそうなのに・・・その上、理樹と鈴も失う・・・!?
そんなのは耐えられない。

「落ち着け。真人」

謙吾が俺の肩に手をかける。
・・・その手は震えていた。

「何か考えがあるんだろう・・・、恭介?」

謙吾の問いかけ。
・・・いや、あれはすがっているんだ。
恭介の持つ可能性に。

「手段は・・・ある」
「本当かよっ!?」
「ああ、いいか・・・よく聞け・・・」

恭介の口からでたのは信じられない話だった。
俺達リトルバスターズで世界を作る・・・!?
そんなことが可能なのか・・・?
俺と謙吾が訝しげな顔をすると・・・

「何だ?お前ら、俺が信じられないのか?」

恭介は笑った。
屈託のない笑み。
昔からこいつがこんな顔をした時は絶対にうまくいった。
それに・・・俺が恭介を信じられないなんてことはありえない。

「俺の筋肉の見せ所ってわけだな!!」
「ふっ。とっとと世界でも何でも作ってやろう」

謙吾も俺と同じ考えに至ったようだ。
こんなところまで腐れ縁だな俺達は。

「ああ、もうすぐみんなが目を覚ます。みんな俺の呼び掛けに答えてくれた・・・全員が、だ」
「よっしゃ!!あいつらが目を覚ますまでにできることはやっておこうぜ!!」
「ふ、そうだな」

そう、俺にはまだできることがあるってことだ。
あいつらのために・・・
それはずっと俺が願ってきたことでもある。

「お前ら・・・」

恭介は少しうつむいたあと・・・顔をあげた。
あの屈託のない笑顔で声を上げる。

「よし!ミッションスタートだ!!」





そうしてはじまった世界。
もう小毬も、クド公も、来ヶ谷も、三枝も、西園も消えた。
そのたびに恭介は数え切れないほどの罪を独りで背負った。
なのに・・・俺はそれを背負ってやることもできない。

俺にできることは恭介を、そして理樹と鈴を信じること。
そしてこの世界での日常を守ること。
この世界を作る時そう決めた。


そんな感傷に浸っている時
最近は決まって昔のことを思い出す。

あれはガキの頃・・・。




「メリーーークリスマスーーーーーーー!!」
「・・・うっさい」

俺たちは5人でクリスマスパーティを開いた。
発案者はもちろん恭介。
俺たちが5人になって初めてのクリスマスだ。

「何だ?お前らノリが悪いぞ!?もっとクリスマスナイトフィーバーを楽しめよ!!」
「と、いうか・・・お前のテンションが高すぎるんだ」

呆れていったのは謙吾。
このころからあいつはひねくれた性格してたな。

「・・・」

鈴は無言でジュースを飲んでいる。
あの頃の鈴は今よりもずっと無口だった。

「おいっ!!理樹!!こいつらになんかいってやれ!!」
「えっ?ぼ、僕?」

最後に仲間になった理樹は、まだ俺達に対して遠慮しているようだった。
当然恭介の要望に答えることなどできない。

「と、いうか、真人。何でお前までテンション低いんだよ!?」

恭介が俺に声をかける。
いつもの5人の風景。

こんな光景を俺はずっと夢見てきた。
俺のことを嘲笑しない連中。仲間だと思ってくれる奴等。
本当に夢のような光景だ。
絶対に失いたくない。

「・・・真人?」

それと同時に、俺は怖くなっていたんだ。
本当に俺みたいな馬鹿が、こんな場所にいてもいいのだろうか?
俺がこいつらにしてやれることなんてあるんだろうか?
もしかしたらとんでもない場違いなんじゃないか?・・・と

「真人!!」
「おわっ!?何だよ、びっくりするじゃねえか・・・」
「何ボーっとしてるんだ?」
「・・・なんでもねえ・・・」

謙吾の問いに俺はぶっきらぼうに答えた。
よく見るとみんなが俺の方をみていた。
何をやってるんだ・・・俺は・・・

「・・・・・・・・・・」

黙りこくってしまう俺。
もともと話上手でもない俺には、こんな時どうすればいいのかすらわからなかった。

恭介はそんな俺を見て何かを考え、
唐突に・・・

「真人!!この歌をお前に捧げる!!」

と大声で言った。

「は?」

俺が訳がわからないでいると・・・
あいつは大声で歌いだした。

それは赤い鼻をしたトナカイの歌だった。
ものすごくポピュラーなクリスマスソング。
それを恭介は恥ずかしげもなく歌い続けた。

「喜びました~!!・・・っと、どうだ?」

歌い終わった恭介は俺に聞いてくる。
そレに対して俺は・・・

「何だよ!!俺の鼻は赤くて照明にでもむいてるってことか!?ああ!?」
「・・・10点」
「何がだよ!?」
「お前の答えがだよ・・・」


一体、恭介は何が言いたかったんだ?
他の3人もキョトンとしている。
俺がわけがわからないという顔をしていると・・・

「お前もそのうちわかるさ。さ、それより今はパーティーだ!!歌の礼として真人のケーキもらうぜ」
「あ、ふざけんな!!待てよ、恭介!!」

このあとはいつものような馬鹿騒ぎ。
俺の不安はいつの間にか忘れさられていた。
結局は単純な俺が恭介にうまく乗せられたということだろう。





・・・それだけだと思ってた。
けど・・・今なら馬鹿の俺でもわかる。


あのトナカイは・・・俺だったんだ。
馬鹿な事をみんなに嘲笑され、いつもひとりだった俺のことだったんだ。

だけど、トナカイは救われた。
サンタクロースによって。
あいつは俺に何よりも欲しかったもの。「友達」を与えてくれた。

それに・・・あいつらのために、俺ができること、
俺にしかできないことを教えてくれたんだ。

馬鹿な俺だからこそできること・・・



本当に皮肉なものだ。
この世界のおかげでこんなことに気づくことができるとはな・・・。




「んまっ!!つぁっ!!ちょぎっ!!」

「また奥深い名言が生まれちまったな・・・」

俺の馬鹿でみんなが盛り上がる。
こんな世界でも俺たちは日常を楽しむことができる。


そう。

確かにこの世界は暗いのかもしれない。

なら俺の馬鹿で暗い道でも何でも照らし出してやるさ。

例え、何百回でも繰り返してやる。

俺は馬鹿だからな。




____________________________

今回は真人のシリアスを書かせていただきました。

好きなキャラなのに扱いがひどかったので・・・

うーむ・・・難しい。

もっと五人の絆みたいのが書ければよかったんですけど・・・力不足です・・・

赤鼻と真人ってすごい似てる気がしたんですよね・・・
「暗い夜道はピカピカのお前の馬鹿が役に立つのさ」みたいな。

あ、あれ、俺だけ?スイマセン・・・

ちなみにギャグは充電中ということで・・・

感想いただけると嬉しいです!!
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真人だっ、シリアスな真人だっ!
このブログではお初にお目にかかりますー。
REIという者です。
真人シリアスSS「暗闇を照らす馬鹿」、堪能させてもらいました♪
成る程、真人が赤鼻のトナカイですか……。言われてみると言い得て妙、何故かしっくりくるものがあります。
「暗い夜道じゃピカピカのお前の鼻が役に立つのさっ」と、よく聞くとアレ、これってフォローになってなくね? みたいな言葉であっさり納得してしまうあたり、通じる部分があるなぁ(笑
ちなみに、個人的には真人はギャグ担当の扱いのひどいキャラなのですが、それを承知の上で自ら馬鹿を演じ、みんなの日常の糧となるよう振舞おうとするような漢だと思うワケであります。
そんな真人の心意気が見事に顕れているSSでした!
REI URL 2007/09/25(Tue)22:59: 編集
Re:真人だっ、シリアスな真人だっ!
REiさんこんにちは!!
感想ありがとうございます!!
自分も真人はギャグ担当だったんですけど、見返してみて、これは・・・あまりに不憫だ・・・ということでシリアスなのもつくってみました!!

赤鼻のトナカイは決して褒め言葉じゃないでしょうが、馬鹿が役に立つということを真人に教えるために使ってみました!!でも普通の人が言われたらへこみそうですよね・・・

またよかったら感想いただけると嬉しいです!!
【2007/09/26 16:53】
真っ赤な筋肉
読ませていただきました。
真人は確かに哀れなキャラクターですよね。
その姿は、ピエロと言えるかもしれません。
道化のようでありながら、深い悩みや思慮も垣間見せる。
でも、そんな真人だからこそ、あれほどまでに魅力的なのでしょうね。
ギャグ担当としても大好きですが、シリアスな真人も素敵です。
面白かったです!

個人的には、あの世界のでき方に対する見解は違いますね。
恭介たちは理樹と鈴を強くするためにあの世界を作ったのではなく、皆が理樹と鈴を強くすることを願った結果、あの世界ができた。
あの世界は生み出そうとされて出来たものでなく、生まれたもの、皆の理樹と鈴への思いが生んだ奇跡だった、と私は思っています。
個人的な考えを長々と失礼しました。
セレス 2007/09/25(Tue)23:27: 編集
Re:真っ赤な筋肉
感想ありがとうございます!!
道化のようでありながら、最も大人な真人の姿を出そうと思ったんですが・・・むすかしい・・・

あの世界の考察はむずかしいですよね~。まあ、今の状態じゃ明確な答えは多分でないと思います。自分は恭介の世界を作ろうと決めたというセリフから、今のような考えに至りましたが、セレスさんのような考え方も全然ありだと思います!!

またぜひ感想ください~
【2007/09/26 16:49】
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